●夢
「出来ればあいつを堅気にしてやりたい」
事の発端は、そのひと言から始まった。
私もその子とは顔見知りであり、事情を知らなかったわけではないが、まさかこの人の口からこの言葉を聞くとは想いもよらなかった。
日々上〇金集めに苦労してる彼らは、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされた時、最終的に身近な者から取る手段しかなくなる。
そう、友人や家族さえ利用せざるをえなくなるのだ。
「貸しはつくっても、借りはつくってはいけない」
日々その人からくどく言われている言葉がこのひと言である。
決して理解出来ないわけではない。だから私もその言葉通りに彼とは付き合って来たつもりだ。
そして、これから先たとえどんなことがあろうとも、彼とはそのように付き合って行くつもりであった。
しかし、「堅気」という言葉を聞いた瞬間、私の中でひとつの想いが芽生える。
「もしかしたら、彼と一生付き合って行けるのかも知れない」
正直嬉しかった。ただただ嬉しかった。
ある人は私に対してこんな事を言ってくれた。
「圧倒的な強さと隠れた弱さを両方持つ人」
彼も私同様隠れた弱さを持ち合わせる人物であるとするならば、やがて訪れるその日に対してよろこんで命を絶つタイプであろう。
また、私はこの人が想うほど強い人間ではない。
むしろ、全てから逃げ出してしまう弱い人間なのだと思う。
けど、今の私は違う。
「もしあいつが堅気になったら、一緒に酒が飲めるようになる」
「やつには負けたくない」
昨日、勇気を振り絞り受話器を取った。
とある会社に電話を掛けたのだ。
「もしもし…。」
受話器の向こう側で女性が応対してくれた。
なんとも表現しづらい清々しさと、どこか懐かしい気分にさせてくれた。
「これから私自身の本当の戦いが始まる」
やっとの想いで第一歩が踏み出せた瞬間であった。
これから先の道のりは果てしなく遠い。
しかし、私は負けない。
負ける気もしない。
私は、
欲しい物は奪ってでも手に入れる主義。
そして最後に笑うのは、
紛れもなく私達であると信じている。
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